ソウェト音楽監督 デイヴィッド・ムロベッヅィのインタビュー

  • 2009/10/22(木) 00:02:58

 ソウェト・ゴスペル・クワイヤのあの美しいハーモニーの生みの親、音楽ディレクターであるデイヴィッド・ムロヴェッヅィ (David Mulovhedzi) のインタビュー記事を紹介します。 

 デイヴィッド・ムロヴェッヅィは、南アフリカのソウェトで1986年からクワイヤ・グループを指揮してきました。ソウェトにある、ホーリー・ジェルーサレム・エヴァンジェリカル・チャーチという教会のメンバーとしてクワイヤを率い、そのクワイヤは、中国の国家主席や、サウジ・アラビアの王子や、南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラを魅了しました。また、彼のクワイヤは、ミス・ワールドの公演やマイケル・ジャクソンの南アフリカ・ツアーでもパフォーマンスを行いました。まさに当時南アフリカでも名実ともにトップの実力であったデイヴィッド・ムロヴェッヅィを音楽ディレクターとして迎えた時点で、ソウェト・ゴスペル・クワイヤのこの高いクオリティは約束されていたのでしょう。

 これから紹介するのは、2007年4月、ブラックゴスペル・ドット・コムに掲載されたインタビュー記事の一部です。3枚目のアルバム「アフリカン・スピリット」が発売されるタイミングでそのインタビューは行われました。彼がどういう思いで「ソウェト・ゴスペル・クワイヤ」を結成したのかを知ることができます。

オリジナル記事はこちら

2007年4月 ブラックゴスペル・ドット・コム 
記者:クリストファー・ヘロン

クリストファー・ヘロン(以下、CH):
 ソウェト・ゴスペル・クワイヤは2002年に結成されました。さて、どんなきっかけで、南アフリカのソウェトから、この世界各地を巡業するクワイヤが誕生したのでしょうか?

デイヴィッド・ムロヴェッヅィ(以下、DM):
 いくつかの影響がありました。オーストラリアにいる私たちの友人からの影響。そして、南アフリカにある教会の指導者からの影響です。みんなが言いました。私たちはゴスペルグループを結成するべきだって。そしてクリフォード(前回のファンクラブ通信では触れませんでしたが、Clifford Hocking(クリフォード・ホッキング)もソウェト・ゴスペル・クワイヤを設立したプロデューサーの一人でした。)と、ビヴァリーと私とでオーディションを始めました。色々な教会やコミュニティーから、たくさんの人たちが応募しました。最終的に、私たちは、美しい声を持った、もちろんこれこそ私たちが求めていた要素なのですが、しっかりとした自制心を持った32名のシンガーを選びました。(ファンクラブ註:2002年のクワイヤ結成当初は26名のメンバーであったと公式には発表されています。しかし、その後、あまりのオファーの多さにメンバーを増やし、現在では52名(かそれ以上)が在籍し、2グループに分かれて活動しています。)

CH: 
 では、「ソウェト」として知られる地域について少し教えていただけませんか? 南アフリカにあるこの町というか村は、どうしてそんなに特別なのでしょうか? なぜ、この地域から、そんなにもたくさんの才能豊かなシンガーたちが輩出されるのでしょうか?

DM:
 「ソウェト」は、南アフリカの中でもよく知られたタウンシップ(黒人居住区)です。この町自体は遠い昔に発見され、そこに住む人々は、ほとんどがかつて田舎の方からこのタウンシップに移ってきた人々でした。「ソウェト」にはこの場所特有の政治的背景、文化的背景がありますし、またたくさんの歴史があります。そして闘争が盛に行われた苦しい時代に、人々は様々な異なる教会の垣根を越えて集結するようになりました。

 彼らはひとつになって神様に祈りました。いつか自分たちが自由になれるように。自由に他の町へ行き来できるようにと。(ファンクラブ註:アパルトヘイト時代、黒人は居住が制限されていただけでなく、16歳以上の黒人は常時「身分証明書」を携帯せねばならないとする「パス法」まであり、不携帯の場合は、逮捕されることもありました。)

 そうして、私たちは、「自由の歌」と「宗教的な歌」の両方を歌い始めました。一方、教会の人たちはもっぱら讃美歌を歌って、一緒に集まる度に神様を讃美していました。そして彼らは、憎しみがあってはならないと人々に説きました。そんな大変な時代に、ゴスペル音楽は南アフリカの人々にとってまさに神様からの最高の恵みでした。
 
その結果、ほとんどのクワイヤが、元々どこの教会で歌われていた讃美歌なのかなんて気にすることなく、教派を超えて一緒に同じ讃美歌を歌い、楽しむようになったのです。ですから、ソウェト・ゴスペル・クワイヤが結成された時、私たちは、いろんな教会のいろんな美しい讃美歌をすべて歌う必要がありました。そうすることで南アフリカらしいひとつのヴォイスとして結実させていったのです。

CH:
 どうして、「サウス・アフリカン・ゴスペル・クワイヤ」とか、「ヨハネスバーグ・ゴスペル・クワイヤ」ではなく、「ソウェト・ゴスペル・クワイヤ」と名付けられたのですか?

DM: 
 この美しい名前を思いついたのは、歴史的背景からです。同様に、私たちは、「ソウェト」が、歌と踊りの卓越した才能を持つ人たちが存在する有名なタウンシップであることを想いました。だから、「ソウェト・ゴスペル・クワイヤ」にしたのです。

CH: 
 アメリカのゴスペル音楽は、黒人教会の経験、というか黒人教会のスタイル、あるいはカルチャー、いや讃美に深く根付いていると思います。きっとデイヴィッドさんも演奏旅行中にこういったアメリカン・ゴスペルに接する機会があったことでしょう。では、南アフリカのゴスペル音楽と、アメリカで歌われているゴスペル音楽は、根本的にどう違うのでしょうか? またデイヴィッドさんは、アメリカと南アフリカを比べた時、この二つの異なる黒人教会における、讃美のスタイルや讃美のカルチャーの違いは何だと思われますか?

DM: 
 私が思うアメリカのゴスペルと南アフリカのゴスペルの違いは、アフリカの人々は神様を賛美する時にアフリカンドラム(ジャンベなど)やフット・ストンピング(足の踏み鳴らし)を交えます。アメリカ人も確かにダンスしますし体もよく動かします。いろいろな違いはあると思います。でも、南アフリカ人もアメリカ人も、主に感謝を表しますし、神様が私たちに与えてくださる恵みを喜び祝います。

CH: 
 アメリカのゴスペル音楽は、神様を礼拝する気持ち、讃美する気持ち、愛する気持ちを表現するとてもスピリチュアルな面があると思います。そしてこれらすべての特性は、ソウェト・ゴスペル・クワイヤの音楽を通しても経験することができます。では、ソウェト・ゴスペル・クワイヤには、パフォーマンスやレコーディングを通して、この「神様の存在」を証ししたり紹介したりする使命があるとお考えですか?

DM: 
 それはまた別だと思います。しかし同時に、私たちが行うすべてのパフォーマンスの中に私たちは自分たちの才能を詰め込んでいます。これは音楽ミニストリーです。私たちは世界中を旅しながら音楽を通して仕えています。南アフリカから運んできた美しい歌を聴きながら、お客さんたちは一緒に歌ったりして楽しんでくださるのです。人々は神様を讃美し、そして、ダンスやフット・ストンピングは、世界中で鳴り響くのです。こうして私たちは、自分たちがどうやって神様を讃美するかを世界に示しているのです。 

 デイヴィッド・ムロヴェッズィ(以下、DM): エイズはいまだに南アフリカを苦しめている本当に残酷な病気です。ソウェト・ゴスペル・クワイヤはコンサートツアーで世界を回り、ゴスペルを伝えています。私たちはこどもたちを助けたいと申し出るのですが、私たちの手が行き渡らないこどもたちが必ずいることに気付きました。その子たちのことを思うと、どうすればその子たちのことをちゃんと見ることができるだろうか?と考えました。そこで、私たちは、「ンコシズ・ヘイヴン(神様の安息の地)」というチャリティー基金を設立しました。私たちがショーで受け取った募金によって、(エイズによって親を失った)こどもたちに衣服や毛布や生活必需品を買っています。彼らが孤児としてちゃんと生活していけるように。時に政府は当てになりません。だから、私たちがこどもたちを支援する役割を担っているのです。ショーのあいだ、私たちはベストを尽くします。でもそれはお客さんに楽しんでもらうこと、世界中をまわることだけではありません。私たちには果たさなければならない大切な使命があるのです。孤児たちだってちゃんと大切にケアされて育てられなければならないということを、私たちは知っているからです。

 クリストファー・ヘロン(以下、CH): まだソウェト・ゴスペル・クワイヤを生で見たことがない人たちに対して、最初にどんなことを期待してほしいですか?

DM:
 まず初めて私たちのコンサートに来てくださる方々は、私たちの音楽を楽しんでくださることでしょう。おそらく他では見られたことのない音楽だと思います。私たちは、ステージでたくさんダンスもしますしフットストンピング(足の踏み鳴らし)もします。もちろん、美しい歌を私たちの母国語で歌います。スワヒリ語、ズールー語、コサ語、そしてもちろん英語。本当に楽しいコンサートですよ。

 たとえ異なる言語で歌われたとしても、だからといって何もわからない訳ではないと思います。音楽は世界共通語ですから。きっと初めての方々も楽しんでいただけると思います。実際、私たちは世界中でそうしてやってきましたし、お客さんたちは立ちあがって私たちと同じように踊って私たちと一緒に喜びを分かち合ってくださいました。英語では、有名な「アメイジング・グレイス」や「オー・ハッピー・デイ」を歌います。これはみなさんがよくご存知な曲なので、コンサートの曲目に加えるようにしています。