南アフリカ国歌贈呈

  • 2010/01/16(土) 16:07:27

コンサート終了後に、チャリティー募金活動のためにホワイエ(ロビー)に出てくるソウェト・ゴスペル・クワイアのメンバーに向けて、南アフリカ国歌を歌って贈呈しようという企画は、実は今年の7月に思いつきました。このレポートでは、その企画の発端から、実現に至るまでの経過と、実際に歌った時の感想を発表させていただきます。

まずは、その時の、僕と、このプロジェクトのディレクターであるTAMAKIさんのメールのやりとりを、お恥ずかしながら、紹介させていただきます。

2009年7月8日 Shogo:
>実は、僕がずっと温めていた企画というか、ソウェトが来たときに是非やってみたいことがありまして、、、


>それは、コンサート終了後に、きっとチャリティーのためにロビーでお客さんを迎えてくださるソウェトのメンバーに向けて、南アフリカ共和国国家を、日本人の即席クワイヤで歌ってプレゼントをするという案なんです。

>きっと、ソウェトのメンバーたちも、初めて来る日本で、日本人のファンたちがズールーやコーサやアフリカーンスの歌詞を覚えて自分たちの国歌を歌ってくれるなんて思ってもいないでしょう。それも、南アフリカの人にとっては、本当に本当に大切な国歌を。

>これまでソウェト・ゴスペル・クワイヤが歌を通していかに僕たち日本人にも多くの感動と力を与えてくれたか、その感謝を表すには、同じ歌でお返しするのが、歌が人生の大切な部分として生きている彼らにとっても、最高の表し方なのかなぁという気がするのです。そうしたら、きっと彼ら歌に入ってきて、一緒に合唱もできますよ。そんなことができたら、本当に一生もんの大切な思い出にもなりますし、彼らにとっても、日本は特別な国のひとつとなるでしょう。

>本格的な練習はできないかもしれませんが、有志だけ事前に個人練習しておいて、それでですね。実際その場では、是非、環さんにディレクションをお願いしたいのです。

>ロビーで、ソウェトと日本人のファンたちが一緒に、♪ンコシシケレーリー・アーフリカー♪ と大合唱。いいアイディアだと思いませんか? もう僕なんか、その様子を思い浮かべるだけで、涙が出てきます。絶対、ソウェトのメンバーたち、喜んでくれると思いませんか?

TAMAKI:

>即席クワイヤー、是非是非やりましょう!!

>必要ならパート別で録音して配りマッセ〜。

>本当に一緒に歌えたら、もうそこで死んでも本望です〜。

>あぁまたしばらく眠れないかも・・・笑  でも嬉しい。



それから、9月7日に配信しましたファンクラブ通信第4号で、ファンクラブの皆様にこの企画について発表させていただきました。歌詞は、TAMAKIさんが 耳コピーしてくださったカタカナ歌詞を元に、ズールー語を習っている真貝さんの監修を経て出来上がりました。TAMAKIさんは、このためにローランドの録音機を購入し、原曲から耳で、ソプラノ・アルト・テナーの3声を聴きとり、自らパート別に歌って録音し、音源を作ってくださいました。

この企画への参加希望者を募った結果、ほぼ全公演に対して参加希望の申込をいただきましたが、最終的に、全パート合わせて10名以上の人数が集まった日に 絞り、初日の江東、2日目の川口、4日目の所沢、7日目の渋谷で、この国歌贈呈を実現する計画が決定しました。(渋谷は直前に会場側の都合で実現できなくなりました。渋谷公演での歌う予定だった方には、本当に申し訳ありませんでした。)

僕は、当日になって参加希望者が集まり、そこでいきなり合わせて歌うというまさに即席クワイアを想像していたのですが、TAMAKIさんより、やっぱり練習をしましょう!というご提案をいただき、またまた今度は練習への参加者を募り、11月3日と11月23日の祝日に、東京都内のスタジオを借りて、合同練習を行うことにしました。僕が参加させていただいたのは、2回目の練習でした。正味1時間くらいの練習でしたが、皆さま、さすがにクワイア経験者の方ばかりのせいか、すぐに覚えて、最後に合わせた時は、歌っている本人たちが鳥肌が立つくらい素晴らしいコーラスに仕上がりました。TAMAKIさんの、指導の上手さ、そしてこの企画に懸ける皆さんの熱い情熱をあらためて感じたリハーサルでした。

コンサートの初日までもうあと2週間と差し迫った頃、思わぬ知らせが舞い込んできました。

初日の江東は、コンサート終演直後に南アフリカ大使館が歓迎レセプションパーティーを開催するので、クワイアメンバーによるチャリティー募金活動は中止!

既に初日に国歌を歌うことを楽しみにしているファンクラブのメンバーの人たちの気持ちを考えると、是非、初日の国歌贈呈は実現したい。また、歓迎の意を込めての南ア国歌贈呈でもあるので、やはり初日には実現させたい!やりきれない思いで、つい口から出たのは、「じゃあ、その大使館のレセプションで歌わせてください!」という嘆願でした。

でも、そう言い終えてから、あらためて考え直してみると、実はこれはすごいことになるかもしれない!という予感がふつふつと湧いてきました。南アフリカ大使館主催の歓迎リセプションで、日本人の有志がクワイアを結成し、南アではもう国宝級扱いのソウェト・ゴスペル・クワイアの目の前で、彼らの国の歌、「ンコシシケレリ・アフリカ」を歌う。南アフリカのアパルトヘイトという歴史が凝縮されたあの国歌を、僕たち日本人が、歌う。
ズールー語やソト語やアフリカーンス語の歌詞を覚え、おまけに南アのお家芸であるコーラスという表現手法によって。
国同士が行う表面的な友好ごっこのパフォーマンスではない。これこそ、真の文化交流なのではないか?

彼らのことを慕い、真剣な思いで歌を覚え、練習し、尊敬と感謝と歓迎の心をこめて南アフリカの国歌を歌う。
もちろん、ソウェト・ゴスペル・クワイアのメンバーたちにこの国歌を捧げたいというのが一番の気持ちでしたが、同時に、大使館の人たちにも、これだけ南アフリカを愛する日本人がちゃんと日本に存在するんだってことを、そしてその気持ちを起こさせてくれたのがこのソウェト・ゴスペル・クワイアだってことを是非知って欲しいと強く思いました。

さあ、今度は南アフリカ大使館との交渉に入ります。最初に大使館の担当者の方と話をさせていただいたのが、ちょうどコンサート当日の1週間前の12月4日の金曜日でした。その時、大使館の日本人の担当者の方は、この企画に大いに賛同してくださり、公使の最終確認が必要ではあるが、ほぼイエスでしょう!という回答をくださいました。ところが、翌週になり、公使に確認していただいたところ、公使からは、実際どんな歌の出来栄えなのか確認しないと何とも言えないというご意見をいただきました。僕はすぐに11月23日に録音したリハーサルの時の音源を大使館へ送りました。まるでこの時のためにちゃんと録音をしていたみたいで、鳥肌が立ちました。しかし、すぐにお返事はいただけず、まあこのあたりのマイペース加減が南アフリカらしいのですが、結局前日の18時半頃 にようやく返事をいただきました。是非歌ってください、お願いします!と。
きっとそうなると信じてはいましたが、もし駄目だって言われたらどうしよう!と、その4日間は、毎日胃がキリキリと痛み、気が気ではなりませんでした。祈りが通じたというか、結果オーライというか、とにかくホッとする間もなく、当日がやってきました。

コンサート会場である、ティアラこうとうに到着すると、そのリセプション会場であるレストランの場所を確認し、下見に行きました。コンサートホールの階からは1階さがった半地下のようなレベルにそのレストランはありました。着席で70席くらいのガラス張りの明るいレストラン。すぐに、参加者に、コンサー ト終了後、速やかにレストランの入口付近に集合!というメールを打ちました。

次に、ビヴァリィさんとの打ち合わせです。来日前に、この国歌贈呈企画の内容については、ビヴァリィさんにも連絡をとり、了解はいただいておりました。ただ、ビヴァリィさんも、メンバーを驚かせるなら初日にやるに限る。何回もやるのは新鮮さも失われるし、意味を感じない。まずは、日本に着いてから現地の様子次第で考えましょう!とおっしゃていて、初日はよしとしても、2日目の川口、4日目の所沢、7日目の渋谷をどうするかについて直接交渉をしなければなりませんでした。

初日の公演終了後の大使館によるリセプション会場で歌うということは、南アフリカ大使館も、今回のコンサートのプロモーターのテイトコーポレーションさんも、僕たちがサプライズでこの企画を考えていることを知っていましたから、当然、ビヴァリィさんの耳には入っていませんでした。僕はまず、リセプションで実行することを報告し、ビヴァリィさんからは快い承諾をいただきました。ところが、「今日だけね!」「これっきりよね!」と何度も念を押されるので、結局、初日の日は、二日目以降も国歌贈呈をやりたいという話を切り出せずに終わりました。初めての日本、まだよく実体がわからないファンクラブという組織、世界のトップアーティストのプロデューサーとして少し慎重になられるのは当然だと思いましたし、あえてクワイアやプロデューサーの迷惑を顧みずに自分たち ファンクラブのわがままを押しつけるのは、ファンクラブとしてあるまじき行動だと僕も思いました。

初日の国歌贈呈がうまくいき、メンバーとの親交が深まれば、2日目以降も、抵抗なく歌える空気が生まれるはずだという確信と期待のもと、とりえあえず、初日のリセプションで歌うために必要な準備は全て完了できたことに、ほっと胸をなでおろし、コンサートスタッフのボランティアの仕事に戻りました。


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興奮と感動と喜びに包まれたコンサートが終了しました。


さあ、リセプション会場である、地下のレストランモアに向かいます。
でも、正直に申し上げると、あまりにコンサートが素晴らしすぎて、国歌贈呈はできなくても十分だよって思えるくらい、僕は幸せの絶頂にいました。2年越しの夢であったソウェト・ゴスペル・クワイアの来日公演が実現し、彼らの歌声をライブで体験することができました。それだけでもう胸いっぱい幸せなのに、おまけに楽屋で彼らに直接会うこともできました。もう、これ以上何を望むの?国歌贈呈なんて、自分が思いついたものの、こんな素敵なことを本当にやっちゃって、大丈夫なの? 幸せのさらにその上の境地を追求することって許されるの? という心境でした。

レストランに入ると、オムニバスのヒーリングミュージックのCDが流れていました。早速、店員さんにお願いして、その日、南アフリカ帰りの友人から入手したソウェトのニューアルバム『GRACE』をかけてもらうことにしました。CDラジカセから、一曲目が流れると、ずっと余韻にひたっていた魂が、また震え始めました。ああ、どうしよう!!!!

レストランの入口付近には、国歌贈呈希望者とおぼしき方たちが集まり始めました。歌詞カードを持っている人、パート別に小声で合わせる人、みんなソワソワしている様子でした。

大使館の人たち、そしてソウェト・ゴスペル・クワイアのメンバーも続々と入場してきます。メンバーたちは、コンサートそのままの鮮やか色彩の衣装を身にまとっての出席でした。

なんとなくみんなが揃うと、メンバーが突然マイクなしで歌い、踊り始めました。マイクがなくても声は響きます。あれだけの激しいステージをこなした後なのに、疲れている素振りを全く見せず、笑顔で歌い続けます。僕たちファンはあらためて、間近で見られるクワイアのパフォーマンスに感激し、言葉を失いました。駐日南ア大使のグロブラーさんも大喜びでした!

クワイアのパフォーマンスが終わった後、大使のスピーチが始まりました。コンサートの最後に花束をメンバーに贈呈し、しっかりとスピーチもされていらっしゃった大使でしたから、このリセプションでのスピーチは短めでした。彼らの素晴らしさと感謝の気持ちを述べられ、来年の再来日を期待する発言をされた後、いよいよ僕たちファンクラブが紹介されました。

最初は、レストランの隅っこの角で集まって歌おうという話をしていたのですが、いざ出番になるとその場の流れで僕たちは、横二列に並ぶソウェト・ゴスペ ル・クワイアの本当に真正面、実に2メートルくらいしか離れていない至近距離に立ち、対面の状態で歌うことになりました。もう、すぐ目の前に、クワイアのメンバーがいらっしゃいます。みなさん、期待に満ちた眼差しでこちらを見つめていらっしゃいます。

緊張はありませんでした。ただ、喜びのなかにいました。

TAMAKI さんから、ショーゴさん、スピーチ! と求められました。

話したいことは山ほどありました。正直、3つくらいのパターンのスピーチも考えていました。自分でスピーチを考え、練習をしながら感動して涙ぐんでしまうことが何度もありました。

でも、スピーチをし始めると、なんだか自分で自分を抑えられなくなるのではないかと思いました。言葉が溢れて止まらないのではないか、感情が溢れて泣きだすのではないか。
そこで、一瞬で決断しました。やはり、彼らに感謝を表すには、心をこめて南アフリカ国歌を歌うこと、これしかないと思いました。言葉をどれだけ並べるよりも、心のこもった歌の方が、僕たちの気持ちは彼らに伝わるだろうと思いました。それが歌にいのちをかけているクワイアに伝えるには、一番の方法だと思いました。

「I am speechless!」 本当に感無量で言葉がありませんでした。そして僕は、シンプルにこう話しました。
「ンコシシケレリ・ソウェト・ゴスペル・クワイア! ンコシシケレリ・アフリカ!」
(ソウェト・ゴスペル・クワイアに神の祝福あれ! アフリカに神の祝福あれ!)

そして、TAMAKI さんの指揮により、僕たちは歌い始めました。

頭が真っ白になって、せっかく覚えた歌詞も全部飛んじゃうんじゃないかと心配していましたが、案外、歌詞は自然とすらすらと出てきました。

(ズールー後、コーサ語)

ンゴシ  シゲーレーリー  アーフリーカー

マルパガ  ニュィースー  ポンドルワー ヨー

イゾワイミ  トァンダーヅォ  イェーツゥ   

ンゴーシー シゲレーラー

ティーナ  ルサポルワーイョ



おおっ、結構、やるじゃない! すごいわ!って表情で、メンバーの方々は目を輝かせながら、こちらを真剣に見てくださっています。



(ソト語)

ムレナブルーカシィ  チャバサエス

オゥフェディセ  ディンツァリマ  ツェーニュェーホ



僕たちも、少し硬さがとれ、緊張よりも、その場で歌えることを心から楽しんで、歌えるようになっていました。



オゥセボルァーケーウ  スィブルケ    

スィチャーバーサ  イェース

スィチャーバーサ  サゥダーフリーカ  サゥダーフリーカ



さぁ、ここから元気よく歌うところ。感激している気持ちを奮い立たせながら、勢いをつけてアフリカーンス語の歌詞を歌い始めました。



( アフリカーンス語 )

エイジ ボロン ファン ノンセー イエーメル

エイティジー ジィェーファン ノン シィェー



だんだん、ソウェトのメンバーの方々も乗ってきてくださって、彼らの気持ちが、鑑賞する側から、歌の中に参加する側に入ってきてくださる気配を感じました。



オーロン シィエー フェー  フグゥェー フェー ベーテス

ワディ クランセー アン(ト)ウォッ(ド) ギェー



さぁ、クライマックスに向けて、一度、盛り上がったところから、一旦、声のボリュームを落とします。

(英語)

Sounds the call to come together, And united we shall stand.



この一呼吸の瞬間、メンバーの方々と気持ちがひとつになれたような気が僕はしました。

一緒に歌い始めるメンバーもいらっしゃいました。



僕たちも、大声で、喜びを爆発させて歌いました!



LET US LIVE AND STRIVE FOR FREEDOM,

IN SOUTH AFRICA, OUR LAND!!!!!



ウオーーーーーーーっという、ものすごい大きな拍手と歓声が、湧き起こりました。

メンバーも大喜びで手を叩いてくださいました。

大使館の人たちも大はしゃぎでした。



その拍手と歓声はしばらく止みませんでした。





ソウェトのメンバーと抱き合って喜びを交わす、TAMAKIさん、ファンクラブの有志。







「あぁ良かった!」「神様、ありがとう!」というのが、歌い終わった時の正直な気持ちでした。

ソウェトのメンバーも、大使館のみなさんも、コンサートスタッフや関係者の方々も、そして僕たちファンクラブも、みんな喜んでくれて、本当に良かった!と思いました。

そして、このコンサートを実現し、国歌贈呈企画を実現し、こんなにも素晴らしい時間を与えてくださった神様に、感謝の思いがあふれて止まりませんでした。







国歌を歌っている時は、実はあまり何も考えていませんでした。



夢が叶った!とか、何かを達成した!という感慨深い思いは、僕の場合は全くありませんでした。



歌っている時、僕は、ずっとTAMAKIさんの指揮と表情と、ソウェトのメンバーの顔を見ていました。

ああ、現実なんだ!という喜びが、体中に広がって、なんだかすでにふわふわしていました。



今、自分はソウェトのメンバーの前で歌っている。この瞬間瞬間を、脳裏に刻みつけよう!

という冷静な思いも少しはありましたが、



それよりも、シンプルに、嬉しかった!の一言です。

もう、とっても、めちゃめちゃ、ものすごく嬉しかった!です。 

心の底から、いや体全体が嬉しかった!です。



そしてその嬉しさの中から、じわじわと感謝の気持ちが湧いてきました。

メンバーひとり一人のお顔を見ながら、感謝の気持ちで歌いました。



僕の人生の中で、ソウェト・ゴスペル・クワイアに出会えたこと、これが一番の感謝です。

ソウェト・ゴスペル・クワイアのない人生なんて、ありえない! 普通にそう思います。



でも、歌っている時は、思いはそこまでにも至らず、ただ、ただ、嬉しい!ありがとう!

という気持ちでいっぱいでした。



SIYABONGA (ありがとう!)

この映像は、その翌日、公演2日目のコンサート終了後に、ホワイエで歌った時の様子です。
http://www.youtube.com/watch?v=j2GM4ATrN3k

ソウェト・ゴスペル・クワイアがもたらしたもの

  • 2010/01/16(土) 16:01:16

ソウェトゴスペルクワイア。

彼らの存在は、一部のゴスペル愛好家の間ではよく知られていたと思います。インターネット等を通じ、僕たちファンクラブでもいろいろなところで紹介させていただきましたし、おかげさまで、一度彼らの歌を聴いてくださった方はたちまち彼らのファンになり、口コミでどんどん拡がっていきました。でも、まだまだ一般的な認知度はほぼ無いと言えるでしょう。今回のコンサートに足を運んでくださった、おそらく半数以上のお客様は、新聞広告等でこのコンサートのことを知り、クリスマスだし面白そうだからとチケットを買われた方、つまり全く初めてソウェト・ゴスペル・クワイアを見聞きする方、あるいは事前に少しホームページやYouTubeでチェックはしたけれどCDは持ってないという方だったかと思います。そういった方々の感想をお聞きすると、たいてい皆さんがおっしゃったのは、太鼓が2つだけであとは人間の声だけなのに、それであの迫力、あの世界感は信じられない!ということでした。ソウェト・ゴスペル・クワイアの並外れた歌唱力は、日本人のアカペラやコーラスに対する既成概念をいい意味で覆したと思います。

「伝統ゴスペルのルーツ」という少しおかしなキャッチコピーが、今回のコンサートのチラシを飾っていました。正確には、南アフリカのゴスペル音楽は、「伝統ゴスペルのルーツ」とは言い難いのですが(そのことについてはまた別の機会に説明させていただきます)、ただ、ソウェト・ゴスペル・クワイアの歌うゴスペルは、皆さんが聴きなれたアメリカのブラック・ゴスペルとは、少し異なるスタイルのゴスペル音楽であるという点を強調するには、効果的なキャッチコピーだったかもしれません。ソウェトを聴いて、ああ、これがゴスペルのルーツなんだ!と誤った認識を生むきっかけにはなりましたが、一方で、これもゴスペルっていうか、黒人たちがエモーショナルになって盛り上がる黒人クリスチャンたちのための教会音楽だけがゴスペルなのではなく、ソウェトの歌のように、クリスチャンであるか否かという垣根を越えてあらゆる人々を包み込むような、もっと優しくて、わかりやすくて、美しい音楽でもあることをたくさんの人々に気付かせてくれたと思います。

また、ソウェト・ゴスペル・クワイアがもたらしてくれた南アフリカの人たちの歓喜に満ちあふれたアフリカンスピリットは、僕たちの心を明るく変えてくれました。どうして、彼らはあんなに明るいんだろう?どうして彼らは、あんなに楽しそうなんだろう?どうして彼らはあんなに元気なんだろう?一体、アフリカン・スピリットって何だろう?そう不思議に感じられた方はたくさんいらっしゃったかもしれません。

もちろん、アフリカ人としての気質、つまり、陽気さ、おおらかさ、素朴さ、情熱。
そして、アフリカ人としての音、つまりメロディーやハーモニーやリズムに関する抜群の感性と、音楽に懸ける様々な思い。
それらが、アフリカン・スピリットのアフリカンな側面を代表していると思います。
では、彼らのスピリットは、どのように特別なのでしょうか?

実際に彼らの歌や踊りを生で体験し、また舞台裏で彼らと直接お会いし話をさせていただいて感じたこと、それは、彼らのスピリットの「純粋さ」でした。

ソウェト・ゴスペル・クワイア。彼らはプロのパフォーマーです。連日ほぼ同じセットリストをこなします。プロとして当然ギャラももらっています。コンサートの興行はビジネスです。しかし、彼らはパフォーミング・アーティストであると同時に、いや、それ以前に、ワーシッパー(Worshipper=讃美を捧げる人。礼拝者)です。彼らはステージに立つ前に必ず円陣を組んで、みなで手をつなぎ祈りを捧げます。そして一旦ステージに上がると、彼らは純粋に歌い、純粋に踊り、純粋に神を讃美します。ですから、たとえ同じ曲を歌っても、毎日、歌う度に、その歌は新しい歌になります。新しい気持ちで、純粋な気持ちで歌 うからです。Warren という背の高い男性メンバーが、言ってました。「俺たちはステージ上でも歌うことによっていつも神様を讃美している。それは俺たちの心の底からの神様への思い(スピリット)だ。だから俺たちの歌にはいのちがこもるんだ。でないとただの歌になってしまう。」

この世には、単なるエンターテイメントとして、ビジネスとしてゴスペルを歌うアーティストが少なからず存在するのは事実です。しかし、ソウェト・ゴスペル・クワイアは、ビジネスとして割り切って歌うのではなく、また、自分たちの歌の技術によって称賛を得るために歌うのでもなく、お客さんに感動を与えるために歌うのでもない。いや、確かに、連日のステージで、疲れていても、プロとしてステージに上がらなければならないから仕方なくステージに上がる日もあるでしょう。彼らも人間です。ただ、一度ステージに上がり、歌い始めると、彼らの内側からアフリカン・スピリットが湧き起こり、彼らは歌と踊りを通して、純粋に、心から喜んで、神を讃美するのです。だから、手抜きや力の出し惜しみはありません。毎回、精一杯ベストを尽くし、全身全霊で歌い、踊ります。そんな彼らの純粋なスピリットの「潔さ」と、そこに込められた「いのちの喜び」が、結果として、観客の心に届き、大きな感動を生むのだと僕は思います。

彼らの笑顔が忘れられないと言った方がいました。その笑顔に懐かしさを感じたと言った方がいました。

彼らの笑顔が、アフリカン・スピリットを象徴していると言えるのかもしれませんね。

コンサート直前までの出来事

  • 2010/01/16(土) 15:50:50

ソウェト・ゴスペル・クワイアの初めての来日公演は、大盛況のうちに無事終了しました!

日本での滞在期間は2009年12月9日から12月21日までの13日間。東京6箇所、埼玉2箇所、神奈川1箇所の合計9箇所の会場を回りました。

(以下、文中、「ソウェト・ゴスペル・クワイア」のことを、単に「ソウェト」と略すことがあります。)


2007年2月に初めてソウェト・ゴスペル・クワイアの存在を知って以来、ほとんど毎日のように彼らの歌を聴いてきましたが、ライブで体験する本物のソウェト・ゴスペル・クワイアは、僕の予想と期待をはるかに超える素晴らしさでした。これまで僕はいろいろなところで、彼らの素晴らしさを言葉で表現してきましたが、言葉なんてその本質の十分の一さえ表現できないことに気付きました。言葉にならない感動。言葉にするのがもったえない感動。いや、言葉なんて必要ない!と思ってしまうくらいの圧倒的な感動。それくらい大きな感動をソウェトはもたらしてくれました。コンサートが終わって一週間くらいは、さすがの僕も、今回のコンサートレポートは書けないよぉ!と正直そう思っていました。そして、いまだにその感動は大きくて、なかなか言葉に置き換えていくのが難しいのですが、徐々にその作業を僕はこれから行っていきたいと思います。


第一部 コンサート直前までの出来事

ソウェトの一行が初めて日本の土地に降り立ったのは、初日公演の2日前、12月9日でした。シンガーが18名、サウンドエンジニアなどで総勢20名。さらに、マネージャーのトニーさん(女性)、そしてエグゼクティブプロデューサーの、ビヴァリィ・ブライヤーさんも一緒でした。

僕が初めて本物のソウェト・ゴスペル・クワイアに会ったのは、公演初日の12月11日のティアラこうとうの楽屋でした。最初にお会いしたのはビヴァリィ・ブライヤーさん。イメージ通りの、余分な愛想を振りまかない、でも心の温かい女性でした。「あなたがショーゴね。いつもクワイアをサポートしてくださって ありがとう!あぁ男性だったのね。世界中にファンがいるけど、熱心にいろいろと支援してくれるファンは、たいてい女性なのよ。」「ところでセットリストは見てくれた?あなたの希望通り、ホザナを用意したわよ!(ウィンク)」

実は、この「ホザナ」はアルバム『アフリカン・スピリット』に収録するために歌って以来、コンサートでは一度も歌ったことがなかった歌で、今回のジャパンツアーのために決められたセットリストには入っていませんでした。それを、日本のファンが一番好きな曲のひとつがこの「ホザナ」なので、是非歌って欲しいと来日前に嘆願したら、何と、来日に間に合わせて練習してきてくださったのです。僕にとっては、いきなりビッグサプライズでした!「ビヴァリィさん、ありがとう!!!」「いいのよ。日本のみなさんが楽しんでくださったら嬉しいわ!」

そしたら、ビヴァリィさんが唐突に、「メンバーのみんなにあなたを紹介するわ!」と言って、歌声が漏れてくる控え室のドアを、練習中にも関わらず、コンコンコン!とノックします。これがまたビッグサプライズでした。ドアを開けると、控え室には男性シンガーたちが勢揃いしていました。

「みんな、彼がショーゴよ!日本のファンクラブの人。カナダのエレイン知ってるでしょう?彼女の日本版ね。今回のコンサートをサポートしてくれたの」

「Hi, Shogo! How are you doing?」
シャイなんですけど、何人かが僕に声をかけてくれました。男性シンガーたちは、みなさんわりとマイペース。ヘッドフォンをつけて音楽を聴いたり、ホワイトボードの下の細長い隙間に体を横たえて居眠りをしたり、のんびり、リラックスした時間がそこには流れていました。

次に案内してもらったのは女性シンガーたちの控え室でした。同じように僕のことが紹介されると、今度は、ワァーという歓声とともに拍手が起こりました。そんな!逆にメンバーから拍手をしてもらえるなんて、予想外の歓迎に僕は感激のあまり口から言葉が出なくなってしまいました。
なんて謙虚でフレンドリーなんだろう?言葉にならない声で、僕は何度も、Thank you! Thank you! Thank you! と繰り返していました。

その後、僕はロビーに戻り、スタッフとして開場の準備を手伝いました。

外はあいにくの雨。それも結構激しい雨でした。おまけにとても寒くて、、、会場まで足を運んでくださったお客さまには本当に気の毒でした。でも同時に、大変な思いをして来てくださったお客さんが、これから、かつて見たことも聴いたこともないものすごい歌とダンスを体験されるんだなあと想うと、心が踊りました。

そしていよいよ、ソウェト・ゴスペル・クワイアにとって記念すべき初めての日本公演、初日のステージが始まりました。

平日の夜の、それも「ティアラこうとう」という東京でも東側、江東区にあるホールは、翌週に予定されていた「すみだトリフォニーホール」とエリアが重なっていたせいもあってか、初日の公演だというのに、一番チケットの売れ行きが良くありませんでした。でもいざステージの幕が上がると、そこには会場の9割以上を埋め尽くすお客さんの姿がありました。

ソウェトの生みの親 デイヴィッド 天に召される

  • 2009/12/25(金) 21:51:31



ニュースが遅くて申し訳ありません。悲しいお知らせです。

ソウェト・ゴスペル・クワイア結成時のクワイアマスターであり音楽総監督である、デイヴィッド・ムロヴェッヅィさんが2009年12月19日に天に召されました。

デイヴィッドさんは、ソウェト・ゴスペル・クワイアにとっては本当に父親のような存在でした。

彼が作曲した曲(アルバム『Blessed』に収録の、"Shewane" や、"A Place in Heaven")、彼がコーラスアレンジをした曲、彼がクワイアを指揮した曲のみならず、彼のスピリットは、ソウェト・ゴスペル・クワイアが歌う全ての曲を通して、クワイアメンバーの歌声のなかに生きています。こんな素晴らしいクワイアをこの世に創設し、私たちに残してくださったこと、心から感謝します。

Thank you, David!

ソウェト・ゴスペル・クワイアは、今や、日本も含む世界中の人たちから愛されるゴスペル・クワイアとなり、たくさんの人たちに生きる力を与えています!

きっと天国でも、Heaven Gospel Choir を結成して、神様を喜ばせていらっしゃることでしょう!

今晩 NHK BS1 23:15〜 ソウェト特集

  • 2009/12/15(火) 21:11:52

<速報>

ソウェト・ゴスペル・クワイアの来日公演(12/12:川口公演)の模様を、NHK/BS1が取材にきてくださり、その内容が今晩(12/15)放映される予定です!!!

●12/15(火)夜11時15分〜 NHK BS1
「きょうの世界」

10分間ほどの特集です。皆さま、どうぞご期待ください!!!

また、ご家族、ご友人、お知り合いの方など、じゃんじゃんご紹介のほどお願いいたします。

楽しみですね!!!